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キズナアイをTangoのMRで見てみる。Unity+TangoSDK+キズナアイ

初のGoogle TangoデバイスLenovo Phab2プロをUnityでいじってみました。

MRとARの境目は曖昧なのですが、これまでによく見かけたかざすと浮き出るタイプのARはマーカーを基準に画像を表示させるため、マーカーが視界の外に出るとモデルは非表示になってしまっていました。このデバイスでは三つのカメラを使って空間のモデルを構成し、そこにモデルを関連づけます。だから、ここではやっていませんが、机の陰に入るとモデルが見えなくなると言うことも可能なのです。

昨日公開されたばかりのキズナ・アイちゃんを配置してみたんですが、アニメーションがうまくつかなかったので、こちらの映像のはUnityAssetから。


発売されたばかりであんまりドキュメントとかはないんですが、これならほとんどコードを書かなくても実現できます。Google Tango SDK

一枚の写真で見るとこれまでのARと変わらないし、回り込めたりスカートを下から覗いたりできるというのもViveで実現できることです。ですが、実際にやってみると想像以上のものがありました。想像の世界が背景の現実の世界によってより強められ、実在感が強められるのです。ハードウエア自体は後数年でVR/AR/MRを兼ねたものになるはずですが、体験の方は少し違うようです。

吸血鬼や幽霊が鏡にうつらないのは物理的現実を超越した想像的世界の住人だからですが、逆に、VRの世界では、プレーヤーである僕たちの方が、半透明な曖昧な存在です。
VRの世界では、僕たちは自分を鏡で見ることはできないからです。

今日試してみたキズナアイちゃんやAoiちゃんは同じ空間にはあるけれど、鏡に映らない存在です。だからこそいっそう魅力的であり、パンツの存在を確かめたくなるのかもしれません。

(鏡と想像界とくればラカンですが、別の機会に書きたいと思います)

追記(27日)
これを書いた後、アルスエレクトロニカでデバイスの評価を読みました。酷評ですw

 

 

 


MR美少女は鏡にうつらない


鈴木さんと。撮影はすごくお世話になっているPAAKで。

https://twitter.com/techlabpaak/status/813302580302385152

PayPalマフィアを育てたSF小説

ある時期にある場所に居合わせることで、そのメンバーに特別な出来事をもたらすことがある。
音楽の世界ではよく聞くことだが、アートやファッションの世界でも同じことはよくある。

そして僕らの関心の世界ではもっとも有名なのはpayPalマフィアと呼ばれる人たちだ。
(上の写真はこちらから)

創業メンバーのピーター・ティール、イーロン・マスクらの創業しPayPalはebayによる買収後たくさんの人材が在野に下り、Linkedinやyelp,Yammerその他、サーヴィスやシステムを作り出した。

そしてそのほぼ全員が創業期に読んでいたSF小説がある。SF作家、ニールスティーブンスンのクリプトノミコンだ。

これを知ったのはゼロ・トゥ・ワン―君はゼロから何を生み出せるか

の中だったのだけれど、僕も起業する前に何度も読んでいたので驚いたことを覚えている。

小説は現代の主人公と、第二次大戦中の主人公の祖父とアラン・チューリング、アメリカ兵とその孫の過去と未来が平行しやがてリンクしていく。ストーリー自体ももちろん面白いのだが、主人公の起業シーンは今読んでも充分面白いしわくわくせずにはいられないだろう。書かれたのはずいぶん昔だが、トラブルや役員ボードの支配や駆け引き、起業あるあるも面白い。(よく知らないけど)

例えば以下は主人公の起業目論見書の抜粋だ。

序文

[  あるトレンド  ]は誰でも知っているが、[  別のトレンド  ]は深遠なないようなので、たいていの人にとっては初耳だろう。ここで[  さらに別のトレンド  ]は、一見すると全く無関係のようだが、この三つをあわせることによって我々は(所有権と特許権と商標権を主張でき、秘密保持契約で守るべき極秘の)洞察に到達した。それゆえ、[  やること  ]によって株主利益を増大させられるのである。我々が必要とするのは[  大きな数字  ]ドルである。この価値を[  地獄が真夏に凍り付くようなこと  ]がないかぎり、[  あまり長くない期間  ]ののちに、[  さらに大きな数字  ]ドルに増やすことができる。

起業の部分だけではない、whois,telnetやgrep something ファイル名>ファイル名のようなコマンドや、性欲と暗号解読の関係を数式で表現したり、こっち側の人たちを飽きさせない仕掛けがたくさん仕掛けられている。

エンジニアやHuluで「シリコンバレー」を見ているような人は間違いなく楽しめるはず。

もちろん、この本だけが彼らをあのようにした、と言うつもりはないけど、最近小説を読むことが過小評価されすぎている気がするから。
才能あふれる頭のいい人の書いた小説を読むことほど思考を加速させるものはなかなか無いと思うのだ。

ニール・スティーブンスン

そうそう、オキュラスのパーマー・ラッキーがやはりニールスティーブンスンのスノウクラッシュを読んでいたのも有名。

(ただこちらの仮想空間はそれほど現実味はない、それよりも人々が大きな国や地方自治体をすてて、より小さな同質化したコミュニティに引きこもるようになった未来像の方が示唆に富んでいる。そしてこの部分は人工知能とナノテクの未来を描いた「ダイヤモンド・エイジ〈上〉 (ハヤカワ文庫SF)」でよりダイナミックに描かれる)

最近は邦訳が出なくなってしまったけれど、作者のニールスティーブンスンは今あのドリームリープに専属フューチャリストとして囲われてしまった。これはカーツワイルがGoogleに囲われてしまったのと同じ。気づいている人は気づいている。

次回は次世代の起業小説を紹介します。