BabyMetalのリアル

京都の未来という巨大コンペがあって、50年後の京都の未来について論文を書いたことがあった。

遠からず人々は仮想空間で多くの時間を割くことになるだろう、そういった環境での現実の都市が持つべき魅力について考えて、そこで都市が持つべき属性について。
現実を簡単に捏造できるようになるとき、古いものの手触りや現実感こそ、人々がリアルへのアンカーとしてすがるものになるだろう、都市について言うなら、古くてリアルで一意的で捏造不可能に見えるものこそが、仮想空間で日常を過ごす人々に魅力あるものとなるだろうという感じの話だった。

「何か気持ちの悪くないものを見たり手に取ったりできればいいのだけれど、と彼女は思った。…すぐ前に果物屋の手押し車があって、山になった様々な色のプラム、桃、アプリコットが売られていた。アンナは果物を買って、酸味のあるさっぱりとしたにおいをかぎ、なめらかな表面やかすかにけばだった表面に手をふれた。気分はずっと良くなり、訳の分からない狼狽は消えていた。」レッシング黄金のノート

しかし、サイバースペースで過ごす時間が長くなるにつれ、我々は現実に不安を感じ始めるだろう。一見リアルなサイバースペースは、実はフィリップ・K・ディックの描く現実のように簡単に崩壊し、裏返るものなのだ。・・・上田「京都の未来」

それでBabyMetal。
ヒットの要因のひとつは上手なマーケティングなのかもしれない。だが、聞いた瞬間に鳥肌が立つSuuMetalの声が特別なのは間違いない。

上手だ。それでも上手なだけなら音そのものに感動することない。

SuuMetalの声の一意性(敢えて個性とは言わない)が心動かすのだ。

後でスペクトログラムも見てみるけど、SuuMetalの声には倍音が多く含まれる。そしてこの部分は、上手な歌いかたをしてしまうと消えてしまう地声に含まれている部分だ。

この特別さは、SPEEDやlittle glee monsterと比べてみるとよくわかる。彼女らはとても上手だし、涙ぐましい訓練があったのだろうとは思う。でもその訓練によって一意性が失われているのだ。

この部分は、フランスギャルをプロデュースしたゲーンズブールも、角川春樹も気づいていたのではないかと思う。訓練された声優を使わない宮崎駿も間違いなく、昔からそれを意識している。
AutoTuneやオーバーダブどころかリバーブもほとんどかけていないBabyMetalの中の人はもちろん意識的だろう。

パフュームや初音ミクを経過して、簡単に体験を捏造できるようになった今になってやっと、僕たちは一意性に心動かされるようになり始めたのだ。

というのは我田引水しれないけど、

こんな風にPhotoshop修正もカラコンも減っていくだろうし、同じ理由でSaya2016を動かしたときに不気味の谷を超えるのは難しいだろうということをPSVRの発売前に言っておきたかった。
(リアルな3Dモデルに不気味の谷を越えさせるのはQOOQの今年のテーマの一つだし)

追記:とか思ってたらもう公開されてた。けど、多分越えてなんじゃないかと思う()

http://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1610/04/news116.html

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タイトル画像は岡崎京子のI wanna be your dog.

 

スペクトログラムで見るとSuuMetalの倍音成分の豊かさは別格

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BabyMetalの紅月。

バッハのカンタータだとこうなる。

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合唱だから全然違うけど、とにかく声に倍音がほとんどない。(CDからロスレスでリッピングしてるからカットされてないと思う)

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上はベベルジルベルトで下はドリカム

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書き終わって久しぶりに思い出したブルガリアンポリフォニー。これはすごい。地声なのもBabyMetalに近い。
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Youtubeではあんまりいいのがなかった。下は録音が大橋先生(と思う)だから音がいい。